我妻教育〜番外編〜
「あぁ、琴湖ちゃん」


息を切らす私に綾人さんは気づいて手を振った。


若葉くんは、キャッチボールの手を止め、気まずそうに目をそらした。



私はムッとして若葉くんに問うた。

走った影響で乱れた息を整えながら。


「何度も電話したのよ?
どうして出てくれないの。

心配するじゃない」



若葉くんは、ハッとして、地面に放置されていた鞄の中から携帯電話を取り出した。

「…あ、ホントだ。ゴメン」

しまった、という顔で頭をかいた。



本当に、携帯電話が鳴っていたことに、気づいていなかったようだ。


私は脱力してため息をついた。

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