我妻教育〜番外編〜
桧周さんの姿を見て、若葉くんは、萌花さんの手を引き、この場から逃げようとした。



「あれ、もう帰っちゃうの？若葉くん。

もう少し君と、話とキャッチボールの続きがしたいんだけどな」


綾人さんは、兄弟喧嘩など我知らず、といった自然な口調で若葉くんを引き止めた。


「この年になるとなかなかね、キャッチボールなんてしてくれる相手いないんだよ」


手の中のボールをお手玉のようにポンポンと弾ませた。


「せっかくだから、桧周くんも一緒にどう？」



綾人さんはニッコリ微笑んで、ボールを桧周さんに向かって投げた。


ボールは緩やかな孤をえがいて桧周さんが伸ばした手の中に収まった。


「それ、軟式テニスボールなんだ。
その辺に落ちてたんだよね」


と、綾人さんは若葉くんに向かって笑って同意を求めた。

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