我妻教育〜番外編〜
だけど、若葉くんは黙ったまま。


桧周さんも、かける言葉が見つからないのか、観察するような目で黙って若葉くんを見つめていた。


兄弟の間に沈黙が流れる。



「…ねぇ、若葉くん、ここへはよく来るの?」


私は、質問を投げかけた。



若葉くんは首を横に振って、綾人さんの方を見た。


「いや、初めてだよね。

ここに来るのも。会うのも初めてだ」

と綾人さんが若葉くんを見ながら答えた。



「え?!じゃあ、どうしてここに?」


桧周さんが口を挟んだ。


若葉くんは、目を逸らして押し黙っている。



「おい、若葉!」


返事をせかす桧周さんを前に、若葉くんは黙ったまま顔を上げようとはしない。

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