我妻教育〜番外編〜
「教えてあげなよ」


柔らかな声で綾人さんが若葉くんに声をかけた。



若葉くんは、チラリと綾人さんに視線を向けた。


今日初めて会ったばかりの綾人さんに、まるで助け舟でも求めているような、そんな視線に見えた。



そんな若葉くんに応えるように綾人さんは、車椅子を移動しながら若葉くんを手招きした。


キャッチボールで広がっていた輪を一気に小さくして、若葉くんと桧周さんの距離を縮めた(ついでに私も近くなった)。


ああ、上手いな、と思った。



「若葉くん。
ほら、琴湖さんも、心配して駆け付けてくれたんだよ。

心配をかけたこと、悪かったって思ってるんだよね。

だったら、理由を教えてあげてよ。
ここに来たのはどうして?」

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