我妻教育〜番外編〜
「桧周くん。
慌てることはないよ。

“今しかない”ことなんて、ないんだから。
先は長い。

本気になったら、こちらはいつでも大歓迎だからね」


と、ニコリとした綾人さんに、桧周さんは、はにかんで小さくうなずいた。



「せっかくだ。桧周くん。
仲直りに少し若葉くんとキャッチボールでもすれば?」


ソフトな声色。

綾人さんの言葉には、たおやかな吸引力があるように思う。




若葉くんが、大きく振りかぶって、力強いボールを桧周さんに投げた。



「若葉、てめぇ、もっと手加減しろよ!」


手を痛そうに振りながら、桧周さんは笑ってボールを投げ返す。



慣れたフォームでリズムよくキャッチボールを繰り返す若葉くん。


エースと言われていたことにもうなずけるわ。

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