我妻教育〜番外編〜
「違うよ。

琴湖ちゃんが、若葉くんの心にある固く結ばれたヒモを時間をかけて緩めたんだ。

仲直りすべくタイミングで、たまたま僕が立ち会っただけだよ。

何もしてないのは僕の方だ」


そう綾人さんは言ってくれたけれど、私は首を横に振った。



「琴湖ちゃん。君はもう少し、自分を好きになった方がいい」



「…綾人さん、貴方はご自分がお好きですか?」


「…それは難しい質問だね」



「でしょう?」


フッと笑い合った。




孝さまは、夏の太陽のような人。


綾人さんは、秋の風のような人だわ。



秋に風が吹くと、少し、しんみりとした気持ちになる。


それに少し似ている。



季節は、これからが夏本番だというのに。

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