我妻教育〜番外編〜
「琴湖。善彦が、どこに行ったか心当たりはないの?」


母は、行き場のない苛立ちをため息で吐き出した。



「…?どういうことです?
善彦お兄様が何か?」


どこに行ったか?心当たり?


どういうことで?


「まずは説明して下さいな」



尋ねたら、渋い表情のまま、小百合さんが口を開いた。


「善彦さんが、仕事を休んでらっしゃるの」

そして、ふぅ、と細く息をついた。



小百合さんが、両親に代わり、私に事のいきさつを語ってくれた。

疲れた表情で、淡々と。

それでも姿勢は美しいままで(さすがは師範だわ)。




話によると、兄は、この数日間何かと理由をつけて仕事を休んでいるのだという。

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