我妻教育〜番外編〜
仕事が入ったのかと理由を聞いたら、兄は答えなかった。


今更ながらそれが意味深に思えてくるわ。


それ以降仕事を休まれてるのだし…。


これ以上、私には思い当たることなんてない。




「次期家元の襲名の日も近いというのに…!」


苛立ちを隠そうとも抑えようともせず、父は舌打ちをし、頭を押さえた。



母は顔をしかめた。


「とりあえず、善彦と連絡が取れるまでは、風邪で寝込んでいるということにするしかないでしょう」


苦肉の策、といった感じだった。


小百合さんも同意した。




「私は部屋に戻らせていただきます」


一礼して、居間を出た。


部屋に戻りながら、もちろん兄のことは心配だけど、私は少し別のことを考えていた。

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