我妻教育〜番外編〜
私の部屋の前に小百合さんが立っていた。


予想外のことに、心臓が飛び上がった。


「…さ、小百合さん、何かご用ですか?」



小百合さんは、私の手の中の携帯電話を凝視し、


「ねぇ、琴湖ちゃん、今誰と話していたの?善彦さん?」


ジロリと舐めるように私の顔を見る。



「い、いいえ。ただの学校の友だちですわ」


とっさに嘘をついてしまった。

だって、小百合さんの様子がいつもと違ったから。


いつもは聡明でキリリと美しい小百合さんが、無表情のまま目を見開いて私に迫ってきた。


そして、携帯電話を持つ私の手首をギュッとつかんだ。


「ねぇ、琴湖ちゃん、ほんとうは、知ってるんじゃないの、善彦さんの、居場所、教えてくれない?ねぇ」


よく見ると、その目は血走っていて、息も荒い。

つかまれた手首が痛い。

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