我妻教育〜番外編〜
「わ、私は何も知りません!」


怖い。


痛さに手を振り払う。



「…そう。じゃあ、何か分かったら、教えてちょうだいね。
私だけに」


そう言い残し、小百合さんはフラフラと廊下を歩いて去っていく。


心臓がバクバクしている。



愛する婚約者の居所がわからないなんて、さぞ不安なことでしょう。


さすがの小百合さんも動揺しているんだわ。



私は大きく深呼吸して気持ちを落ち着けた。





両親は、兄の居所を全力で探しているんだろう。


ただ、はたして兄が見つかるまで、風邪をひいて寝込んでいるだなんて隠し通せるものなのだろうか…。



その不安は翌日早々、見事に的中した。

< 289 / 493 >

この作品をシェア

pagetop