我妻教育〜番外編〜
少し離れて様子を見ている私はハラハラしたのだけど、母は平然と答えた。


「講演会前に、左都子お義姉さまに風邪をうつしては大変ですわ。

善彦なら、寝てれば治りますので、どうかご心配なく」



「そう?それなら、宜しいんですのよ。

本当に、寝込んでらっしゃるだけならば、ね」



顔は笑っていても、目は何かを企んでいる。

そういう笑い方をする人。

そういうところが気に食わないのよね!

と、母はよく言ってる。


多分、伯母さまは、今そういう目をしてらっしゃるのだろう。

母の頬がピクリとしたから。



「では、これお見舞いね。
善彦さんに渡して下さいな」


伯母さまがちらりと息子の和彦さんを見た。


和彦さんが、持っていた紙袋を差し出した。

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