我妻教育〜番外編〜
片付けの続きをしようとする小百合さんに、私は声をかけた。


「片付けは私がいたします。
小百合さんは休憩して下さいな」


私は持っていた学生鞄を広間の端に置き、お弟子さんたちとともに華の道具を片付け始めた。



遠慮がちに奥の部屋に入る小百合さんの姿に目を向けながら、胸が痛む思いがした。



白雪から聞いた話、言った方がいいのかしら…。



だけど、健気に兄の仕事をこなしながら帰りを待つ小百合さんの顔を見たら、何も言えなかった。


両親にさえも。


間違いなく、みんな傷つく。


どうしよう。


ずっと黙っているわけにはいかないのはわかっているんだけど…。



ふぅ、とため息をつきながら、母がこめかみを押さえた。


母も疲れている。

無理もないんだけれど。

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