我妻教育〜番外編〜
父が、兄のことを“身体が弱い”という言い方をしたのは、ちょうど室内には、兄が行方不明だということを話していないお弟子さんもいたためだと思われる。


今こんなところでそんな話をするなんて…。


片付けながら、思わず耳をそばだてた。



母は、キッと父を睨みつけた。


「貴方は、この竹小路流を左都子伯母さまに乗っ取られてもいいと思っておいでですか?!」



「そうは言っておらん!

ただ、家元として相応しい者が継ぐべきであると思っている。

例え、我が子ではなくとも…」


「何をおっしゃいます!!
私は絶対承知しませんからね!!
他人に継がせるなんて!

竹小路に嫁いで、私は、私は何のためにこれまで…」

< 304 / 493 >

この作品をシェア

pagetop