我妻教育〜番外編〜
もう一度深呼吸し、込み上げてくる感情を胸中に留め、せめて冷静な声を心掛けた。


泣いたりしたら、今以上に余計に気をつかわせてしまうから。


ただ、綾人さんの顔を見て話すことはどうしてもできなかったけれど。


「ありがとうございます。
紅茶は、また別の機会に頂きますわ。

今は止めておきます。

今、行ったら、私、話してしまうと思うんです。

綾人さんは、すごく、話やすいですから。

でも、こんな気持ち、人に言うべきことじゃないんです」


「言うべきことじゃない?」



「…すごく、醜いから。私の心はすごく、醜い…」



いつか、綾人さんとした会話を思い出していた。


美しい字を書く綾人さんは、きっと美しい心を持っているんだろうと、私は言った。

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