我妻教育〜番外編〜
そしたら綾人さんは、それなら、私の心も美しいんだろうと言ってくれた。



「…美しい心を持っていたいと思っているんですけれど、難しいですわね…」


私は、うなだれたまま、つぶやいた。



やはり、美しくなどない。


私には渦巻いている。


未礼嬢に対する嫉妬。

姉に対する嫉妬。


なのに、何かを成す情熱も持たない。


私はこれからも人を妬んで死んでいくのだろうか。


そう思うととても怖い。


そんなこと、誰に言える?


結局誰のところにも行けず、度胸もなく、私は黙って家に帰るしかないのだ。



「では、私は帰りますわね。
失礼致します」


私は頭を下げ、来た道に向かって歩き出した。

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