我妻教育〜番外編〜
行きも帰りも同じ道のはずなのに、別の道を歩いているみたい。


この差は何なのかしら。



家が間近になったところで、綾人さんが言った。


「…心配しないでいいよ」



思慮深い声に、思わず立ち止まり聞き返す。


「…心配?何をです?」



「自分の醜いところに気づいて、悩むことができている琴湖ちゃんは、十分美しい心を持っているよ」


綾人さんは、先に目を細めてから、微笑んだ。



…美しい?私の心が?



綾人さんの瞳に吸い込まれるように、しばらく無言で見つめてしまった。




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