我妻教育〜番外編〜
「琴湖お嬢様、大変です!」


夜遅い時間だというのに、一番古株の使用人が、私の部屋の戸を叩いた。


使用人に促されて玄関へ向かう。


玄関に近づくにつれ、勢いよく廊下を走る足音や誰かの大きな声が響いている。


異様な騒々しさだった。



左都子伯母さま一家が、せわしなく押し寄せてきた。


祖父母の姿も見える。


皆、一様に笑顔はなく、どう見ても、ただ事ではない様子。



「お母様、これは一体…?!」


私の前を通る母を呼び止めた。


「いいから!琴湖は部屋に戻っていなさい!」


血相を変えた母は、私に目も向けず通り過ぎた。


皆、居間に集まり出した。



父が廊下を荒々しく歩いてきた。


居間に入る前に、


「…善彦の奴、何てことを!」

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