我妻教育〜番外編〜
父は、独り言を吐き捨て、大きな音を立てて居間のふすまを閉めた。



善彦お兄様!

間違いない。

私だけにメールで謝ってきていた“迷惑”のことだわ!


一体何をしたの?!



部屋に戻るフリをしながら、私はこっそり廊下から居間の様子を伺った。


戸が閉まっているから声しか聞こえないんだけれど。



「だから、今までもずっと言っていたではありませんか!

善彦さんは家元には相応しくないと」

伯母さまの大きな声が響く。


「家元の襲名披露は延期せざるをえんな」

おじい様も怒り心頭のご様子。



「そんな!お待ち下さい!

襲名の日取りはもうすでに発表しているんですのよ!
準備も進んで…」

悲鳴に似た母の声。

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