我妻教育〜番外編〜
『…琴湖なら、そう言うと思った』


啓さまは、フッと笑う。


私もクスッと笑った。



兄の情事に対するトラブルは兄自身の問題。


家族だから迷惑を被っているけれど、家族にもどうすることもできないのに、啓さまにだってどうすることもできない。


そんなことは百も承知だけど、肩の荷が少し軽くなったような気になった。



「お気持ちだけで十分嬉しいですわ。
何か相談がございましたら、連絡いたしますから」


『ああ。遠慮なく言ってくれ』


「啓さま。ありがとうございます」



電話を切っているところで、萌花さんが小さな自転車をこぎながら公園に入ってくる姿が見えた。


立ち上がり手を振る。




「琴湖さん!うちに一緒に帰ろ!」


自転車を止め、私の側に駆け寄るなり萌花さんは言った。

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