我妻教育〜番外編〜
綾人さんの静かな声に、緊張しながら答えた。



「…姉や未礼さんのように、私も何かを見つけたいんです。

だけど、何をしたらいいのか、自分には何ができるのか、わからなくて…。

今まで生きてきた中で、私は挑戦したことなんてございません。


保守的に生きていた今までの人生を打破したいんです。

今までの価値観から、一歩突き抜けたニュートラルな状態に…」



言ってから、私は俯いた。


膝の上に乗せた手をジイッと見つめる。



反対しているのは、母だけではない。


綾人さんもだ。



桧周さんからの返事もまだない。


仕事やご兄弟との事情があるだろうから、返事を急かしたりできないんだけれど…。



無言のまま、綾人さんはパソコンを打ち出す。

< 377 / 493 >

この作品をシェア

pagetop