我妻教育〜番外編〜

その玖

「はじめまして。

国際NGO団体グリーン☆マイム副代表の文城綾人と申します」



母を呼び止めたのは、綾人さんだった。


丁寧に母に向かって自己紹介をし、頭を下げる。



「…貴方が…」

母は、綾人さんの顔から車椅子まで遠慮のない目で一通りジロリと見回した。



それにしても、


「…綾人さん、どうしてここに…?」


いつの間に降りてきていたの?

何かご用でも?


疑問の視線を投げかけると、綾人さんは控えめにはにかんだ。


「うん。…少し、琴湖ちゃんのこと、突き放し過ぎたかなって気になって、窓から見てたら、何やら揉めてるのが目に入ったから。

ちょっと様子を見に降りてきたんだ」




「文城さんとおっしゃいましたわね?」


と母は、ツカツカと綾人さんに詰め寄った。

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