我妻教育〜番外編〜
でも、まともに取り合ってもらえないのに、どうすればいいの…。


ただ頼む。それぐらいしか思いつかず、頭を悩めながら母の帰りを待っていたら、門に向かって歩いてくる母と一緒に、久しぶりに兄(善彦)の姿を見た。


母方の祖父母宅に身を寄せていた兄が、母に背中を押されながら自宅に帰ってきた。


うなだれながら歩く兄。
少し、やつれたように見てとれた。



兄は現在強制休業中だったのだけれど、どうやら近々仕事も復帰することになったようだ。


これまでのように、次期家元(候補)として責任ある業務内容ではない。


おもてに出るような仕事ではなく、いわゆる事務方の内勤からの仕事復帰。


だけど、それでも、兄の家元就任をあきらめていない母にしてみれば、一歩前進だった。


母の足どりが、ここしばらくで一番軽く感じられた。

< 397 / 493 >

この作品をシェア

pagetop