我妻教育〜番外編〜
急な許しに、ポカンとした私の横を母が通り過ぎた。



去り行く母に、私も背を向けた。


…すっきりしない。


希望は叶えられたから、喜ばしいんだけれど、複雑な思いにかられ、唇を噛みしめた。



改めて思い知った。


母にとっての私って、つくづく後回しなのよね。


何よりも、まずは兄。


兄の状況が前進したからこそ、母も私のわがままを許す気になれたのだろう。



目を閉じ、こめかみを押さえる。


母の足音が止まった。

反射的に母の方を向く。


振り返らずに、母は言った。


「薬だけは忘れずに持って行くのよ」


「はい!お母様。ありがとうございます」


深々と頭を下げて母を見送る。


母が立ち去ったあとの廊下で一人立ち呆けていた。

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