我妻教育〜番外編〜
“私、大人になったら、看護師になりたいわ”


『看護師?看護師になってどうするのだ?』


啓さまは、他意なく、本当に不思議そうに聞いていた。


『琴湖は、お嫁さんになるのよ』


母は、まだ幼い私の夢を否定した。



孝さまだけだった。


『イイじゃん、看護師!

面倒見がよくて、しっかり者の琴湖には向いてるよ!(^ー^)b』


看護師にはなれないと言ったら孝さまは残念そうに私を抱きしめ、言った。


『また教えてよ、やりたいこと見つかったら』



初等部1年のとき。


私の前から、孝さまは消えてしまった。


私が入院中のことだった。


ちょうど新しい治療を試しているときで、副作用で本当に苦しかったときだった。



ラフな格好でリュックを背負った孝さまが現れて言った。


『しばらく会えなくなるんだ。

琴湖が大変なときに、ゴメンな。

啓志郎のこと、よろしく頼むな』


表情は引き締まっていた。


すごく怖かったことを覚えている。

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