我妻教育〜番外編〜
『どこへ行くの?』

尋ねたら、わからない、と孝さまは首を振った。


『いつ帰ってくるの?』

わからない、と孝さまは首を振った。



『強くなって帰って来るよ』


そう言い残して、出て行った。



その後、私は、治療の成果が出て、劇的に回復した。


入院することもなくなっていき、今では、外来の経過観察のみだ。



身体も丈夫になり、成長とともに、私は少し大人になった。


孝さまは、もういない。


いつの頃からか自然と、孝さまを慕う気持ちは消せなくても、できる限り封印していかなければならないんだと思うようになっていった。




昨年の秋のこと。


突然、孝さまは帰って来た。


啓さまや、ジャン、未礼嬢、桧周さんたちが一緒にいたときだった。



“『強くなって帰って来る』”


その言葉通り、堂々と凛々しく逞しく。


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