我妻教育〜番外編〜
世の女性が理想の王子様だと憧れを抱いていた美しく上品な容姿をしていた孝さまは、日焼に焼け、あごひげをはやし、ワイルドで男っぽい風貌に変わってしまっていた。



まるで別人のようだったし、突然帰って来た驚きと相まって、私は内心パニック状態だった。


だけど、周りにたくさん人がいたから、私は極端に平静を装い、口をつぐんでしまった。


本当は、孝さまに聞きたいことはたくさんあったんだけれど。



実際、孝さまと二人で話す時間は、ほとんどなかった。



皆が一緒にいたし、孝さまはすぐに発たれてしまったから、私に与えられた孝さまとの時間は、ほんの二、三言程度だった。


それも、変わってしまった孝さまを前に、何を話して良いのかわからなかった。



『大人っぽくなったなぁ~、琴湖!
女の子って大人になるのがホントに早いなぁ。

元気だったか?』


私と視線を合わせるように、顔を傾けて全面でニッコリと笑った。



『ええ。孝さまこそ、お元気そうで何よりですわ』


私は自然に笑えていただろうか。


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