我妻教育〜番外編〜
『はい。お任せ下さい。

お気をつけて、行ってらっしゃいませ』



いつ帰って来るの?とは聞けなかった。


平静を装い続けた、よそよそしい最後の挨拶だった。



なぜならば、悟ってしまったから。


孝さまは、遠くの人になってしまった。


私も、甘えるだけではなく、色々とわきまえることができる年齢になっていた。


離れていた時間は、思っていた以上に長かった。


私も孝さまも、あの頃とは違うのだから…。



再び孝さまが旅立たれてすぐ、孝さまは事件に巻き込まれ命の危険にさらされた。


幸いにもご無事で何よりだったけれど。



後悔した。


必要以上に大人びた対応をとってしまったこと。

何一つ、自分の言葉で話をしなかったこと。



だから、決めていた。


次会う機会があれば、

迷わず昔のように、

孝さまに……―‐‐―…‥‥‐‐‥


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