我妻教育〜番外編〜
熱、といっても、普通の風邪などではない。


私の病気は、完治することはない。

医師からはそう言われている。


長く付き合っていかなくてはならないんだ、と。


上手く付き合えば、普通の日常生活を送ることに支障はない、と。


ずっと調子よくきていたから、油断していたのかもしれない。



かつて、急な発熱には散々泣かされてきたというのに…。



どうして?!


どうして、よりによってこんなタイミングなの?



唇を噛みしめた。


そんな私を気づかいながら、使用人は声をかけてきた。


「琴湖お嬢様。

入院になるそうですので、私は必要なものを用意して参ります。

すぐ戻りますね」



「…お母さまは…?」


やっと出せた声は、自分でも驚くほど、かすれた声だった。


使用人は、言いにくそうに答えた。


「…奥様は、お仕事が終わられてから…、…夜には来られるとおっしゃってました」


「…そう」



一礼をして使用人は出て行った。
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