我妻教育〜番外編〜
私は、孝さまに会って、どうしようというのだろうか。


たぶん、どうするという訳でもない。


ただ、あの笑顔を直に見ることができたなら、私はきっと、それだけで十分だ。




ベッドで身体を起こし、窓越しに空を見上げた。


まぶしい夏の青空だわ。


遠くに入道雲、そして、ちょうど私の前を飛行機が横切る。

青い空に白い線を引きながら。


予定では、私も今頃は空を飛んでいるはずだった。


なのに、なぜ?


点滴の管は外れたけれど、まだ病院のベッドの上だなんて。



「桧周くん、出発したよ。見送ってきた」


病室に入ってきて開口一番。

言いながら、綾人さんも飛行機雲を見上げた。



「そうですか」


私も空を見上げたまま答えた。



桧周さんは、医療支援隊とともに予定通り孝さまの待つ現地へ出発した。


結局、私だけが脱落して行けなかった。
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