我妻教育〜番外編〜
綾人さんは、静かに首を横に振って言った。


「孝市郎も残念がってると思うよ」


その労るような声が、逆に私の胸を苦しくさせた。


綾人さんは、悪くない。
私の心の問題だ。


自分自身が情けなくて、苦しいのだ。



「ここまで頑張れたのは、きっと、ゴールに孝さまがいらっしゃったからです。

孝さまに会えると思ったから…私は…」



私は、自分自身の身体も心も、上手くコントロールできると自負していた。


なのに、身体の異変を見逃した。

倒れるまで気づかなかった。


それほどまでに、舞い上がっていたということ?


情けない。



「自分自身が変わるために決めた冒険のはずだったのに…。

もちろん、変わりたい気持ちは変わってないんです。

なのに、私、わからなくなってしまったんです。
結局何がしたかったのか…。

強引に、綾人さんを巻き込んでおいて、無責任ですわね…。

こんな私に、ガッカリしたでしょう?」


今、綾人さんはどんな顔をされている?


不安ながらも、おずおず綾人さんの顔を見上げる。
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