我妻教育〜番外編〜
「キレイごとですわ」


口先だけの励ましなら、必要ない。

疑う気持ちで綾人さんを見返す。



嘘偽りなどない。

そう言わんばかりの綾人さんの焦げ茶色の美しい眼球は、真っ直ぐに私に向けられていた。


「ゴールにたどり着かなきゃ、輝けないのかな?

もがいてる姿でも、努力してる人は魅力的だ。

僕は、君を見ていて、そう気づいたんだ」



…―え?


え?何?私を見ていて?気づいた??


「それって、どういう…」



目を見開いた私に向かって、綾人さんは病室の外を指差した。


「琴湖ちゃん、散歩の許可は出てるって言ってたよね?

身体の調子良ければ、気晴らしに少し散歩しない?」

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