我妻教育〜番外編〜
「小児専門の病院ってだけあって、可愛いよね」


綾人さんと並んで病院の中を歩く。


カラフルな内装。

窓や壁にはキャラクターの絵。

あちこちから、子どもの声。


綾人さんは、興味深そうに見回した。



「そうですわね。
季節ごとに貼られる絵も変わるんですの。

今は夏っぽい絵ですけれど、10月なら、ハロウィンとか、12月ならクリスマス。
ツリーが飾られたり、サンタが来たりもするんです」


「へぇ~。そうなんだ。
それは子どもたちも嬉しいだろうね。

―調子はどう?」


周囲に目を向けながらも、押し付けがましくなく、さりげなく私の体調を気づかってくれる。



「ええ。大丈夫です」


私は、綾人さんの問いかけに答えながら、上の空でいた。


…だって、気になるわ。


さっき、綾人さんがおっしゃった、あの台詞…

(―…努力してる人は魅力的だ。
僕は、君を見ていて、そう気づいたんだ。)


どういうこと?!私が、魅力的ってこと?!…まさか!!


詳しく聞きたい。


だけど、どう聞いたらいいのかしら。

そもそも、聞いていいもの?



思案しながら、キョロキョロ視線を漂わせていたら、周囲からの視線を感じた。



すれ違う人は必ず綾人さんを見る。


車椅子に乗っているからというだけではないのは、明白だった。



無意識に見入ってしまうのだ。



美しく整った繊細な印象の青年だから。


私も例外なく、何度も見ている顔なのに、ふと見入ってしまうことがある。



綾人さんは、男らしさとか、女らしさとか、そういう世間一般の尺度とは別次元の美しい容姿を持った人だ。


加えて、とらえどころのない空気感。


そう、穏やかで笑みを絶やさない人だけど、本心は見えない…――
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