我妻教育〜番外編〜
綾人さんの淡々と話す横顔。

かすかに口元が苦笑いした。


「…僕は、醜い。

美しい心を持つなんて、僕には到底無理だ。

孝市郎は、そんな僕の気持ちなんて見透かしてる。

にも関わらず、孝市郎は僕に笑顔を向ける。

心からの笑顔を。

その度、僕は自己嫌悪を感じながら孝市郎と付き合い続けているんだ。

僕は、そんな人間だ。ガッカリするよね?」


綾人さんは言いながら、私に苦笑いして見せ、また正面を向いた。


そして、息を吐きながら目を伏せて、まぶたを震わせた。



「…ガッカリなんて、しません!」


私は、必死で首を横に振りながら、思わず綾人さんの手を握った。


自分でも、なぜそうしてしまったのか、わからなかった。


ただ、綾人さんが泣いてしまうんじゃないかと思って…。


でも、泣いていたのは私だった。



「琴湖ちゃんて意外と泣き虫なんだね」


綾人さんの指先が私の手を握り返した。



“親友”の話も私がした。


私には親友と呼べる人がいない。

綾人さんには親友がいますか?…―と。


安直に、綾人さんの親友は孝さまだろう、なんて自己完結していたけど、あの時に答えてくれなかったのは、このように後ろめたく思うところがあったからだ。



そういえば、“心が美しい”、という話も私。

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