我妻教育〜番外編〜
私が何の気なしに発した言葉で、少なからずも綾人さんに嫌な思いをせてしまっていたんだ。


綾人さんは、いつも何事もないように振る舞っていらっしゃったけれど。


表に出さないだけで、誰しも、うちに秘めたる想いというものがある…。



どうして、私は、私ばかりが不幸だなんて思ったりしたんだろう。



胸の奥が痛いほど苦しくなった。




私は人前で泣いたことがない。


ほんの一月前まで、そう言われていたのに。


また私は人前で泣いている。



綾人さんのいう通り、私は変わったのかもしれない。


私だってずっと、平坦な気持ちで生きてきたんだもの。


こんなに容易く感情が高ぶるなんて、知らなかったわ。



綾人さんは、呟くように口にした。


「…こんなこと初めて話したよ。

今まで誰にも話せなかったから…」


「どうして、私なんかに話して下さったの?」



「何でかな…。

醜いとわかっていても誰かに聞いて欲しかったのかもね。

人に話すようなことじゃないけど、反面、話してしまいたいって思ってた。

皆、僕のこと、飄々としてるとか、デキた人間だとか、色々言ってくれるけど、本当は違うんだって。

理解してくれないだろうって人には、言いたくないけど。

だけど、琴湖ちゃんは僕に弱いところも、頑張っている姿も、色々と見せてくれた。

君になら、分かってもらえるんじゃないかって…。

自分が楽になりたいだけで、かえって君の負担になっちゃったかな?」

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