我妻教育〜番外編〜
美しい容姿に、つかみどころのない性質。


何を考えているのかさっぱり見えなくて、綾人さんのこと、人形のようだと思っていた。


だけど、違う。


美しい人形でいられるはずなんてない。


生きているんだから。


感情を持たないなんて無理だ。



「いいえ。私に話して下さったこと、嬉しく思います」



ガッカリなんてするはずがない。


素敵な方だと思う、当初からの印象は変わらないまま、さらに、より親しみが湧いたわ。


何より、打ち明ける相手に私を選んでくれたことが、とても嬉しかった。



私しか知らない綾人さんの本心。


二人だけの秘密。

それとも共犯者?


秘密めいた感覚に、不謹慎ながらも、胸がワクワクと高鳴った。



高ぶっていた気持ちが落ち着いてきて、ふと自分の手元に目をやったら、ハタと正気に戻った。


私は、綾人さんの手を握りしめている。

しかも両手で。


さっきまで夢中だったから、気づかなかったけれど、男性の手をこんなにも…


慌てて手を離した。


「し、失礼致しました!私ったら、はしたないことを…」



頬が紅潮する感覚に、バクバクと高鳴る鼓動。


綾人さんは、特に気にも止めていないようだったけれど、…恥ずかしい。


悟られないように、居直った。
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