我妻教育〜番外編〜
翌日、無事に退院した。



珍しく母が迎えに来てくれ、一緒に車に乗り込む。


すぐに家に戻り、静養すべきだとは思っていたけど、母の許しもあり、ある場所まで車を走らせた。



「良かったわ。間に合って。今日が最終日だったんです」


来たのは、姉の個展だ。


来ることができて良かったわ。


受付を済ませ、母と共に中に入る。



若い女性のお客さんの姿が多く見られ、初の個展にしては、中々の盛況のようで安心した。


部屋の中央に、この個展の目玉である作品が飾られている。



「素敵。さすが榮華お姉さまだわ」


見上げて息を飲む。


濃く深い真紅の華々。


燃え上がっていくような、まさに情熱そのもの。



「そうね…。素晴らしいわ」


母は呟き、誇らしげにため息をついた。



「琴湖!」


姉の声。


どこにいたのか、私に気づいて、駆け寄ってきた。


こんなときくらい、小綺麗な格好でもすれば良いのに、相変わらず古びたジーンズにTシャツ姿だ。
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