我妻教育〜番外編〜
「琴湖!母さんも!来てくれてありがとう!」


姉は満面の笑みで歓迎してくれた。


「琴湖、髪!切ったんだ。短いのも可愛いじゃん!」


「ありがとうございます」



「琴湖、身体は大丈夫?ゴメンね、見舞い行けなくて」


「いいえ。お姉さまはお忙しいでしょうから。

私ならもう大丈夫ですわ」


「そっか、良かった」



「それよりも、素晴らしい作品ですわ」


会場内を見回し、姉を讃えた。


「ありがとう。私も良いデキだと思ってるんだよね」


ヘヘヘと、姉は照れ笑いして見せた。



それから、少し顔をしかめた姉は声を抑えて、私と母に耳打ちした。


「どうも、私が竹小路家の人間だってこと、噂が流れ出してるみたいなんだよね」


「まぁ…」

私と母は、顔を見合わす。



姉は、自分が竹小路家の人間であることを隠して、フラワーデザイナーとして活動をしていた。


勘当された身であることに加え、七光りだとか、そういう色眼鏡で見られたくなかったからだ。


姉は、頭をかいた。


「ま、仕方がないか。

いつかはバレることだって覚悟はしてたし。

私がどこの誰かってことは、切っても切れないことだからね。

それに、うちに生まれたからこそ、華と出会えたんだから」


姉は華奢な肩をすくめて開き直った。

< 433 / 493 >

この作品をシェア

pagetop