我妻教育〜番外編〜
「それにしても、琴湖がボランティアに興味あったなんて知らなかったわ」


姉は、私を見つめてニッと笑う。


孝さまのところへ行こうとしてたこと、直接姉に伝えた訳ではないけれど、母経由ででも耳にしたのだろう。



私は決まりが悪くて縮こまった。


ボランティアですって?

残念ながら、そんな立派な話じゃなくってよ。


最大の目的は、孝さま。

だなんて、さすがに姉に対しても恥ずかしくて言えず、

「…何かしたいと思ったんです。

せっかくの夏休みでしたから」

と、言葉を濁す。



「へぇ~、良いんじゃない?

やりたいって思っても、なかなかできないことでしょう?

私も、何かしたいと思ってるけど、この仕事からはひとときも離れることかできないからさ。

何をしたら良いかもわからないし…」


「結局、行けませんでしたけどね」



「やろうと思って行動を起こしただけでも立派だよ。

―…あ、ごめん」


誰かが姉を呼んだ。


「じゃあ、ゆっくり見て行ってね」

そう言い残し、姉は呼ばれた方へ駆けて行った。



素晴らしい作品を前に、ここまで自らの力でたどり着いた姉を改めて誇らしく思った。



8月の前半に、ジャンが出演したアイスショーに出向いたときのことを思い出した。


いつか、ジャンはスケートで成功して、グリーン☆マイムの活動に協力したいと言っていた。


私も、協力したいわ。



孝さまの元へ行けなくなった今、綾人さんのようにここで孝さまの役に立てる何かがしたい。


私にできることって、何かしら。

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