我妻教育〜番外編〜
「それから、思ったんだけどさ」


と、桧周さんは前置きして苦笑いして言った。


「医療にしても、教育にしても、土木にしても、専門的な能力があることって、良いなって。

てか、ちょっとジェラシーだった。

経験が大事っていうけど、でも、まず資格ありきだなって。

資格って、デカいな、って。

孝市郎さんも羨ましいって言ってた。

オレも何かコレっていう能力を手に入れたいって、強く思ったんだ」



私は何度もうなずき同意しながら話を聞いた。


桧周さんは、やる気に満ちた人の目をしている。



…やっぱり私も行きたかったな。


だけど、現実的に考えて、知識もなければ体力もない私が、行きたいって気持ちだけじゃ、足手まといになっただけ。


改めて、力不足を実感した。



体力不足を補える何か強みでも手に入れさえできれば…


自信を持って、どんな未来にだって進んでいけるわ、きっと。




「本当にお疲れ様でございました。

どうぞ、ごゆっくりお休み下さいな」


一通りの報告を終え、お帰りになる桧周さんを私は外までお見送りした。


建物から外に出たら、残暑のモワっとした気だるい熱気に全身が包まれた。



「ああ、サンキュ。

一緒に行けなくて残念だったけど、元気そうで良かったよ。

もう体調は良いのか?」


桧周さんは、心配げに私の顔を覗き込んだ。

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