我妻教育〜番外編〜
午後になり、我が家に続々と人が集まり出した。



着物で正装した私は、玄関前でお客様たちにお辞儀をし出迎えていた。



この為、私は今日グリーン☆マイムを休むことになっていた。


家の用事が優先だという約束だったから、仕方ないけれど…。


客人たちにニコニコと頭を下げて愛想よくしているだけで、どうせ私はいつも茅の外なんだから…。



休むなら、自分の部屋にこもってTシャツのデザインをつめていきたいんだけどな…。


というより、グリーン☆マイムに行きたかったわ。


綾人さんの講義の日だって近づいている。


行けば何かお手伝いできることだってあるだろうに…。



不平不満を押し殺し、当たり障りなく良いお嬢さんを演じていた。



客人の数は、近年まれに見る多さで、200名は収容できる規模はある我が家の中で一番大きな部屋が人で埋め尽くされていく。



我が家に訪れているのは、親族、後援者、師範たち、お弟子さんなど、竹小路流の主要関係者たちだ。



“今秋、兄(善彦)の家元襲名と、結婚を同時に発表する。”予定だった。


本来ならば、近々そのようなおめでたい席がもうけられていた時期だった。



だけど、家元から語られる予定になっているのは、兄の不祥事に対するお詫びと、竹小路流の今後についてだ。


つまり、兄の去就と、今後の家元候補について。



竹小路流は岐路に立たされている。



それを物語るように、来客の顔はみな一様に緊張していた。
< 452 / 493 >

この作品をシェア

pagetop