我妻教育〜番外編〜
突如、周囲の緊張感が高まった。



左都子伯母さまが現れたからだ。


左都子伯母さまは、ご主人と、ご子息の和彦さんを引き連れて、入ってきた。


気位高く堂々とした振る舞いは、まさに臨戦態勢そのもの。



現家元(私の父)の姉である左都子伯母さまは、子息である和彦さんを家元にするために、それはそれは心血を注いでいらっしゃる。


本日正式に新次期家元に立候補されると見られている。



次期家元だった兄(善彦)の失墜により、兄が外れるならば、次期家元の最有力候補は和彦さん。というのが大方の予想だ。



ただ、私の母も黙っていない。


兄の処分保留を願い出るとみられる。



自らの子を次の家元にしたい、という想いが強いのは、親としての心情というもの。


家元の妻であるプライドもある。



母は、兄の不祥事の火消しに努め、更には兄を自宅に戻し、裏方とはいえ仕事を再開させた。


追々、表に出ていく仕事も再開させるつもりでいるのは間違いない。


そして、兄の信用を回復させ、しれっと何事もなかったかのように、兄を再び次期家元の立ち位置に戻すおつもりでいるはずだ。



左都子伯母さまとしては、そうなる前に早急に和彦さんを次期家元として確定させておく必要がある。


意気込みは半端ない。


左都子伯母さまの強い瞳、表情は引き締まり、浮かべた笑みには凄みを感じて、ゾッとした。
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