我妻教育〜番外編〜
目の前で、覇権争いが繰り広げられようとしている。



そして、少し離れた場所で傍観している私も、その争いの渦に飲まれていく。



ここは、竹小路流の本家。


もしも、和彦さんが、私の父の後を継いで家元に就任したら、私はこの家を出て行かなくてはならない。


…それはいつになるのかしら。



元々父はこの秋に、家元を退き、兄に引き継ぐおつもりだった。


父は、あとどのくらい家元を続けられるだろう。



来客の波がと切れた隙を見て、逃げるように私は少し玄関前を離れることにした。


竹林を散歩でもしようと思ったから。



竹林を眺めながら、この竹林も、私の憩いの場ではなくなってしまう日が来てしまうのだろうか。


そう思うと、心がチクリと震えた。



「琴湖!」



竹林に入る手前で、私の名を呼び掛ける声に振り返る。


「お兄さま!」


「よっ!」


兄の善彦が、私に向かって片手を挙げて近づいてきた。
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