我妻教育〜番外編〜
言ってる意味がいまいち理解できず、私は首をひねった。


私には難しい。



「分かりにくくてゴメンな」


と兄は、なだめるように私の頭を撫でた。



「俺も、こんな自分最低だって思うよ。

…だけど、“彼女”と居るときは、息がつけたんだ」


兄は、竹林の遠くの方に目をやった。



“彼女”は、例の不倫相手の女優さんだ。


“彼女”は、別居中のご主人がいて、子どもさんもいる。


それなのに、兄との間にも子どもを授かったという…。



「“彼女”とは会ってらっしゃるんですか?」


「ほとんど会えてない。…こんな状態だしなぁ」


「“彼女”とご結婚されるおつもりですか?」



「いや、彼女自身、まだ離婚成立してないし。

相手側とかなり揉めてるみたいでさ。

そもそも彼女自身が俺との結婚までは望んでないみたいなんだ。

結婚って制度はもうこりごりなんだって。

うちの人間も、子どもの認知や金銭的な責任を追うことは許しても、結婚までは認めないって言うし。

もう弁護士が間に入ってるから、オレの気持ちだけでどうこうって状況じゃないんだよなぁ…」


そういう意味で進退なし、と兄は、手のひらを上にむけて、お手上げというポーズをとった。


まるで他人事みたいに。


呆れた。


ご自身の問題でしょう?


もっと、自主的に動こうとは考えないのかしら。



「琴湖、俺のこと、本当に情けないどうしようもない奴だって思ってるだろ?」
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