我妻教育〜番外編〜
今日の、この場に出席するために、戻ってらっしゃったの?


姉はいつものジーンズ姿だ。


とても正式な場に出ていくような格好ではないんだけれど…。



「お姉さま、どうして…」


「うん、父さんがね、今日時間あったら寄ってかないか?って連絡してきたからさ」



「お父さまが?」



普段、私は父と連絡を取り合ったりしない。


家族でありながら、父とは微妙に疎遠だったから。


だから、驚いた。


父と姉が親しく連絡を取り合っていたなんて。



姉は頭をかきながら、うなずいた。


「うん、実は今度ね…」


話の途中で、


「善彦さま!琴湖さま!」


大きな声で兄と私を呼ぶ声に阻まれた。


使用人だ。



「こちらにいらっしゃったんですか!」


私たちを探していたのだろう、使用人は息を上げながら、私たちの元へ駆けつけた。


「お二方とも、奥さまがお待ちですので、すぐお戻り下さいませ!

…あら、まあ!榮華さまではありませんか!」


使用人も姉の姿を見て驚いていた。



「私のことはいいから。ほら、兄貴、琴湖、早く戻んな」


姉は、私の背中を押して促す。
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