我妻教育〜番外編〜
「え、ええ…でも」


聞きたいことがまだ聞けていないのに…。


ためらう私に、


「後で話そ」


ポンポンと、姉は再び私の背中を押した。


「はい。ではまた後で…」



母に命じられて兄と私を探しにきた使用人に、連れて来られた。



親族、関係者がズラーっと集まった、我が家で一番大きなこの部屋に。




「本日はお集まり頂き、まことに感謝致します」



旅館の大宴会場のような、この広い室内。


父と母、祖父母が前に並んで座っている。


兄も控えめに両親の横に正座している。


私は、いつも一番端。



広い部屋にひしめく人々の姿が見渡せる。


竹小路流の中核を担う人々が集結している。



座席表などないというのに、派閥ごとに、力の順で上手く並んで座ってらっしゃること。


これを見れば、勢力分布が一目瞭然。


竹小路流の全てがここにある。


グルリと見回す。


部屋の一番後ろ、お弟子さんたちのさらに後ろの立ち見の場所に、ひょっこり顔を出した姉の姿が見えた。


どうして、他人行儀な所にいらっしゃるの?



一通り見渡したけれど、小百合さんの姿は確認できなかった。



まず冒頭で両親と兄は、関係者一同の前で、この度の兄の不祥事を深々と詫び、頭を下げた(もちろん、妹として私も並んで頭を下げた)。



そして、兄の家元襲名に関しては、一旦白紙にすることが正式に告げられた。

今後は、未定。

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