我妻教育〜番外編〜
「家元は、今後とも、これまで通り私が務めさせて頂く」


父は、そう宣言した。


集まった人たちからは、そうすることがベストだろうという承認の拍手が起きた。



それから、父の横で、母が頭を下げてから述べた。


「善彦についてですが、この度の一件につきましては、本人も深く反省致しております。

この場を借りまして、皆さまの信頼を取り戻すべく精進させることをお約束させて頂きます。

今後に期待し、見守って頂きたいと存じます」


母は、もう一度頭を下げた。


兄も一緒に頭を下げる。



すっきりとしない、モヤがかかったような曖昧な空気が流れた気がした。


結局のところ、継ぐのか継がないのか、はっきりとは言わないのね。



はっきりしたことは、この度の兄の襲名に関しては白紙にして、父が家元を続けていくこと。


これまで通り兄が家元を継ぐ(次期家元)立場であるということは、明言しなかったけれど、否定もせず。


それって、次期家元としての肩書きは今後も継続するってこと?


しばらく修行し直し、時期を見ていずれまた兄が家元を継く。


やっぱりそういうことか。と、そう捉えるのが自然な流れ。


チャンチャン(終了)♪



…だなんて、話はそれでは終わらなかった。


当たり前だけど、これだけの人数が集まるそう稀にない機会。


このまま平和的に終わるはずがない。



「お待ち下さい!」


案の定、モヤを晴らすような甲高い声が室内に響き渡った。


左都子伯母さまだ。
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