我妻教育〜番外編〜
現家元の妻である母が推す、兄・善彦。
現家元の姉の左都子伯母さまが推す、ご子息・和彦さん。
そして、師範取締役の富士子さまが推す、小百合さん。
「…三つ巴」
どこかから、密やかな声が聞こえてきた。
その時、
「――いや。四つ巴だ」
父の声。
父が発した言葉に、ピタリとざわめきが止み、皆が一斉に注目した。
―――四つ巴?
ということは、四人?
父は渋い顔で腕組みをしたまま続けた。
「今はまだ言う時期ではないと思っていたが、こうなったら言うしかない。
私にも、個人的に家元候補に推薦したい人物がいるのだ」
家元である父が推薦?!
兄以外に推す人物がいるの?!
「推薦ですって?!」
左都子伯母さまが目を見開いて声を上げた。
左都子伯母さまが驚くのも無理はない。
私だって驚いているもの。
当然、場は騒然とした。
統制が乱れ、戸惑いの空気が渦を巻く。
どうなってるの、今日は、こんな会だったの?!
父までもが、母たちの争いに割って入るなんて!
今まで女の争いなど、聞く耳を持たない感じでいらっしゃったのに…。
四つ巴に加わる最後の一人は…。
私は反射的に、もしかして…と察し、騒然とする群衆の最後尾の立ち見にひょっこり顔を出していた姉の顔を見た。
現家元の姉の左都子伯母さまが推す、ご子息・和彦さん。
そして、師範取締役の富士子さまが推す、小百合さん。
「…三つ巴」
どこかから、密やかな声が聞こえてきた。
その時、
「――いや。四つ巴だ」
父の声。
父が発した言葉に、ピタリとざわめきが止み、皆が一斉に注目した。
―――四つ巴?
ということは、四人?
父は渋い顔で腕組みをしたまま続けた。
「今はまだ言う時期ではないと思っていたが、こうなったら言うしかない。
私にも、個人的に家元候補に推薦したい人物がいるのだ」
家元である父が推薦?!
兄以外に推す人物がいるの?!
「推薦ですって?!」
左都子伯母さまが目を見開いて声を上げた。
左都子伯母さまが驚くのも無理はない。
私だって驚いているもの。
当然、場は騒然とした。
統制が乱れ、戸惑いの空気が渦を巻く。
どうなってるの、今日は、こんな会だったの?!
父までもが、母たちの争いに割って入るなんて!
今まで女の争いなど、聞く耳を持たない感じでいらっしゃったのに…。
四つ巴に加わる最後の一人は…。
私は反射的に、もしかして…と察し、騒然とする群衆の最後尾の立ち見にひょっこり顔を出していた姉の顔を見た。