我妻教育〜番外編〜
父が推したいのは、姉の榮華?!


父が、もっとも認めているのは、姉の才能。


だから父は、姉に継いでもらいたいと思っているはず。


私の視線を受けて、姉はニッコリ微笑んだ。


お姉さまが、竹小路流を継ぐの?!

だから、帰ってきたの?


私の意識は完全に姉の方に向いていた。


だから、


「我が娘の竹小路琴湖を推薦する」


父がそう言ったとき、すぐに反応できなかった。



―――私?!?!


予想もしない展開すぎて、文字どおり点となった。


集まった者たち全員の視線が私に向けられたときも、他人事のようで、ことの重大さを理解するのに少々時間がかかったくらい。



父の顔を見る。


父は、私を見てうなずき、また正面に戻した。


父の推薦は、この私。


本気なの?

聞き間違いではないわよね?!



このあとも会合は続き、父は何か話されていたけれど、頭に入ってこなかった。


現実味がまるでなかった。


今までずっと茅の外だったのよ?


まさか、世襲争いの真っ只中に、私が入るだなんて。



「本日の臨時集会は、これをもって解散とする」


父の声は、どこか遠くで聞こえ、立ち上がり帰り支度を始める人たちの姿もまるで他人事のようだった。
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