我妻教育〜番外編〜
「…―は、はい」
ポカンとした声で返事をした。
私にとっては、当たり前の言葉ではなかったから。
母の口からそんな言葉が聞けるなんて、何だか、信じられなくて…。
今まで母は私を家元にはしないっておっしゃってらしたのに。
家元になったり、やりたい仕事を見つけることより、どこかのお嫁に行くように…と。
私がいまだ信じられない気持ちのまま言葉を紡ぎ出せないでいたら、
「出かける用事があるから、もう行きます」
何事もなかったかのように母は、すっと立ち上がり、着物の裾を直した。
「は、はい」
私も慌てて立ち上がる。
茶室の前で母を見送る。
母が竹林を歩き去って行く後ろ姿をしばらく立ち尽くすように眺めた。
私、母に認めてもらえた……?
竹林を通り抜ける風が、私の肌を少しだけ冷やす。
認めて貰えたってことよね?
私のこと、この家の役に立つと。
初めて、あの母が、この私を…。
誇るべきことよ!
―――なのに、何かしら…。
私は胸を押さえた。
喜んで良いことのはずなのに、胸の中に、どこか乾いた想いが混在していることに気がついたから。
まるで、胸の中に小さな砂漠でもあるような、そんな感覚。
どうして…?
ポカンとした声で返事をした。
私にとっては、当たり前の言葉ではなかったから。
母の口からそんな言葉が聞けるなんて、何だか、信じられなくて…。
今まで母は私を家元にはしないっておっしゃってらしたのに。
家元になったり、やりたい仕事を見つけることより、どこかのお嫁に行くように…と。
私がいまだ信じられない気持ちのまま言葉を紡ぎ出せないでいたら、
「出かける用事があるから、もう行きます」
何事もなかったかのように母は、すっと立ち上がり、着物の裾を直した。
「は、はい」
私も慌てて立ち上がる。
茶室の前で母を見送る。
母が竹林を歩き去って行く後ろ姿をしばらく立ち尽くすように眺めた。
私、母に認めてもらえた……?
竹林を通り抜ける風が、私の肌を少しだけ冷やす。
認めて貰えたってことよね?
私のこと、この家の役に立つと。
初めて、あの母が、この私を…。
誇るべきことよ!
―――なのに、何かしら…。
私は胸を押さえた。
喜んで良いことのはずなのに、胸の中に、どこか乾いた想いが混在していることに気がついたから。
まるで、胸の中に小さな砂漠でもあるような、そんな感覚。
どうして…?