我妻教育〜番外編〜
「琴湖!!」


竹林を抜け、母屋へ向かう途中で、姉の榮華が現れ声をかけてきた。


「どした?浮かない顔して」


出し抜けに、姉は私の顔を覗き込んで言う。



「浮かない顔?してました?」

私は頬を押さえて首をひねった。


姉は母家の方を見ながら言った。

「先に母さんともすれ違ったけど」


「ええ、今少しだけお母さまとお話をしてましたの」


「そっか」


姉は視線を母家から私に向けた。


「琴湖。私、そろそろ帰るね」



「あら、もうお帰りですか?

お姉さま、本日は一体どのようなご用事で?」


「父さんが、今日の会合で、家元候補に琴湖の名をあげるつもりだって言ってたからさ。

せっかくだから、覗きついでに顔見せとこうかな、って思って。

―…出発前に」


出発前に?


「お姉さま、どこかへ行かれるんですの?」
< 475 / 493 >

この作品をシェア

pagetop